うつ病のメカニズムとして、最も支持されているのがセロトニン仮説です。精神の安定とリラックスのためには、セロトニンの働きが欠かせません。うつ状態のときには、このセロトニンが少ないことから情報伝達が悪くなり、さまざまなうつの症状を引き起こします。うつ病の治療中でも不眠になるとセロトニンはさらに枯渇して症状が進んでしまうので注意が必要です。また、眠れないことで、寝酒としてアルコールを飲むとセロトニンはさらに減少してしまうので、悪循環を起こさないようお酒を飲む習慣がある人は気を付ける必要があります。加えて、食欲がなくなることもあり、そうなるとおかゆのようにアッサリとしたものしか入らなくなることがあります。セロトニンの生成にはたんぱく質が必要なので、極力摂取できるような食事をしていき、負のスパイラルから抜け出すことが大事です。また、うつ病になると外出が億劫になり、だんだん家からあるいは部屋から出てこなくなります。休職中や休学中は特に家に閉じこもる時間が長くなるのが一般的です。重度になればカーテンを開けるのさえも辛く、薄暗い部屋に一日中いるようになります。治療を続け、軽症のうつ程度であれば、外出が気分転換になることも多いので適度な運動はいいですが、重度の場合、周囲はその状況を受け入れることが大事です。ただし、極端に光に当たる機会が減ってしまうと、セロトニンの生成が阻害されることになるので、ここでも悪循環を生み出さないよう気を付ける必要があります。外出はしなくてもいいので、朝になったら周囲の人間がカーテンを開けてあげるなど光を感じる習慣をつけてあげることが重要です。さらに、引きこもりがちになれば当然、人間関係に悪影響を及ぼします。うつ病の人は認知機能が変わっています。悲観的になりやすく、妄想的な思考内容が増え、周囲の人に対して無視をしたり、拒絶したり、攻撃したりすることが多いです。特に身内に対しては高圧的になりやすいのも特徴です。それでは、人間関係がうまく回っていかないので、疎外感が深まりますます気分が落ちこんでしまいます。これは、病気が症状の一つであるので、周囲は人づきあいが苦手になってしまうこともあるのだと理解したうえで、接していくことが大事です。加えて、悲観的な妄想が増大する症状が出ることもあります。特に心気、貧困、罪業の3つにとらわれやすく、いずれも認知のゆがみから起こることです。そのため、発する言葉自体を深刻にとらえる必要はありませんが、妄想レベルの思考パターンを言葉による説得で変えさせるのは困難なので、どんな内容かをメモしておき、専門家と協力して見守っていくことが重要になります。